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JPM
(Journal of Property Management - May/Jun 2011)

にIREM-JAPAN 理事 東京支部長 猪俣淳CPM ファカルティーの記事「GREAT QUAKE−TSUNAMI」が掲載されました。

JPM掲載記事(掲載 P24〜27)





 

<和訳文>

GREAT QUAKE−TSUNAMI             

 Mobile technology in crisis

このたび日本を襲ったM9.0という歴史的な大震災に対し、IREM会員の皆さんや、皆さんの国の政府、国民の方々から、様々な援助、応援をいただいていることに心から感謝します。

私が仕事をしている東京・横浜エリアは震源地に近く被害の大きかった東北沿岸部から400km(250マイル)も離れていますが、それでも震度6近くを記録し、石油コンビナートの火災やビル外壁パネルの剥離、マンションの外壁や木造住宅の基礎の亀裂、あるいは天井の落下やガラスの破損、大型商業施設(コストコ!)の駐車場斜路の崩落などさまざまな被害が発生しました。

東京沿岸部の埋立地では(東京ディズニーランドなど)、地盤の液状化によって建物やエクステリア、電柱などの傾きや道路・駐車場の舗装の破損なども起こっています。
しかし、全体的に見ると今回の震災では、1981年以前の建築許可によって建てられたいわゆる「旧耐震基準建築物」も含め、目に見えた被害は意外と少なく、東北地方の方々からも、津波以外での建物被害はあまりなかったと聞いています。専門家からは周期が比較的短い地震波動であったため、建物の共振による被害を免れることが出来たという分析がされています。

震災直後に多くのテナントから発生したサービスリクエストは、主に(1)安全装置によって停止したガスの簡単な復帰作業(2)緊急停止したエレベーターの復旧作業依頼(3)給排水管のズレによる漏水事故の3点がほとんどでした。ただ、津波を含めた震災被害の大きかった東北地域において、全壊・半壊の被害を受けた建物も多くあるわけで、このエリアの被災建築物の再建までに、そして、被災地域全体の復興にどの程度の期間を要するかということが、重要な懸案事項になります。

日本では、木造2階建ての住宅が多いのですが、一般的には着工から完成まで約3ヶ月間といわれています。また、高層住宅やビルの場合はおよそ1〜3年の工期が必要です。ただし、それは平常時においてという前提条件ですから、工場や工業団地への被害、発電所被害による電力不足から実施されている不定期な輪番停電による操業の難しさから、あらゆる建築資材、設備、人員の供給が滞っているこの情勢では、数ヶ月の工期の遅れが発生することが当然に予想されます。津波被害や液状化によって、上下水道、ガス、電気、道路、鉄道などのインフラが失われたり、大きな被害を受けたりした地域においてはその回復が先に必要になりますのでさらに復興までには長い道のりが必要となるでしょう。16年前に起きた記録に残る大きな都市型地震である「阪神・淡路震災」では、復興までに10年はかかるといわれていましたが、わずか6年で駅周辺の再開発が一応の完了をし、目に見えた復興を実感するまでにいたりました。ただ、今回の震災がこの前例と大きく異なる点は、「津波による大きな被害」と「原発事故の発生」です。福島原発周辺地域と東北沿岸部の都市においてはより長期の復興期間を要すると予測されます。

地震発生直後、われわれのPM業務を阻んだのは、公共交通機関のストップとそれに伴う大渋滞とガソリン不足そして社内スタッフ、テナント、オーナー等との通信状況の悪化でした。現在は平常の状態に回復していますが、震災から数日間、携帯電話は基本的に使えませんでした。緊急用の通信を優先すべきという観点からも当然の措置だと思います。一方、ツイッターは地震のそのときにも、刻一刻と社内スタッフ間で情報のやり取りをすることができて、それをテナントやオーナーもフォローすることができたので今回ほど有用性を認識したときはありませんでした、モバイル機器によるインターネット接続は緊急時のインフラとして優れていることが実証されたということでしょう。わが社では、スマートフォンを社員全員に供給していますが、Viber、Skypeの登録を義務付けました。また、災害時の情報入手にはラジオが大きな力をもっていますが、これも全員がRadioJPというアプリケーションを、「ゆれくる」という地震速報や「停電検索」という計画停電情報、「家庭の医学」という応急処置の方法などといった災害用アプリと一緒にダウンロードしました。問題は、インターネットを利用しない高齢のオーナーやテナントですが、こういった方々に対しては固定電話(携帯電話よりも回復が早かったです)が回復するまでは足を運んで連絡を取るしかありませんでした。幸い、事務所機能を持った複数の専用車両とASP化された物件データ管理システムを使って管理物件が点在するエリアを運営していたおかげで、震災後の建物被害状況の把握も含めて、速やかな対応ができたと思います。

現在の仕事の状況は、東京・横浜エリアでは、被害が少なかったこともあり、業務は日常の状態に戻っています。特に、3月は日本の企業や役所、学校の年度終了月でもあり、賃貸住宅市場は一年で最も活況な時期となりますが、今回の震災による経済活動の先行きが見えないことから、退去・引越しを見送る入居者が増えたり、西日本のへの一時的なオフィス機能移転による引越しなど短期的な賃貸住宅市場にも影響を与えています。より耐震性能の高い住宅への借り換えといった需要も発生しています。中長期的には、福島原発事故による放射能物質の漏出に伴い、発生した食品・水・土壌などの環境に対する恐怖から、東日本エリアから他地域への人口移動が発生する可能性があります。現在は幸いパニックには至っておらず、今後も事態の収束の仕方によって、地縁の強い日本の社会においては移動した人口が再度元に戻る可能性もおおいにありうると予想できます。また、復興に伴う経済活動の活性化から逆に人口流入が増えるというシナリオも考えられます。すべては、今後の状況次第ということになりますが、日本は冷静で規律と公共性を重んじる、そして我慢強い国民性をもつということを念頭に予想をしていく必要があるでしょう。

最後に、震災発生後ただちに米国が発動した日本救助作戦「オペレーション・トモダチ」において兵士を送り出すオバマ大統領の愛と勇気に満ちた演説に私も、多くの日本国民も胸を打たれ、大きな感動を受けました。日本も、米国も、そして世界も、いまだ様々な問題を抱えていますが、彼の語るとおり、国々や人々の数え切れない差異など人類が取り組むべき課題に比べればとても小さなものと思います。長い復興の道のりにおいて、明るい未来に希望を抱きつつ、これからも両国が、世界が、そしてIREMの仲間たちが、ともに手を携えていくことを心から望んでいます。

♯110 IREM−JAPAN 理事 東京支部長 
猪俣淳(いのまた きよし)
CPM ファカルティー