CPM制度とはどのような制度なのか

日本でいう「不動産経営管理士」

CPM(Certified Property Managerサーティファイド プロパティー マネージャー)はプロパティーマネージメント業務に従事する人に対して米国シカゴに本部をおくIREM(Institute of Real Estate Management)が認定した教育課程を修了し、一定の試験に合格したものにIREMより与えられる称号である。日本語に言い換えれば「不動産経営管理士」と言った所だろう。

IREMは1933年に設立され80年を超える歴史を持つ。全米を中心に全世界に100を超える支部があり、およそ20,000人の会員がいる。資格保有者としては、10,000人のCPM(Certified Property Manager)、4,000人のAMO(Accredit Residential Manager認定居住不動産管理士)、550のAMO(Accredit Management Organization認定不動産管理会社)を要している団体である。

アメリカの金融大恐慌時代に創設

このCPMを普及しようと活動している国は25カ国にも亘る。

創設の時代は折しもアメリカは金融大恐慌が起きた後で正に経済のどん底、不況の真っ只中であった時である。その当時、アメリカでも各地における不動産賃貸の条件は様々で管理の程度も一定しているものは無かったと聞く。人々はアメリカの将来を憂い、ビジネス界の腐敗を嫌い、信頼を求めていた。

そんな状況の中でIREMは設立され倫理規定の創設に始まり慣習の統一などあらゆる分野に改革のメスを入れて行ったのである。

IREM自身も当初はこの制度の重要な部分すなわち倫理規定の遵守を管理会社に求めようと考え活動をしていたのである。しかし最も効果的な方法で且つその必要性は現実にその業務にあたる個人に求めなくてはならいないと考え、それ以来個人向けに倫理規定はもちろん多種多様にその体系的教育プログラムを構築していったのである。

よってまず1938年にCPMを創設、1945年にはAMOを、続き1974年にはARMをそれぞれ創設したのである。

CPM制度

アメリカと日本の違い

CPM制度について説明する時、なんと言ってもその極めて高い倫理規定と熟考された高度な教育プログラムが不可欠である。また認定団体がIREMであり国や州知事等ではないと言うことも言及しておかなければならない。この点については第一に米国と日本の違いについて必ず指摘されるところである。

すなわち日本はどうしても官僚主導型で未だに「お上」と言う言葉や勝てば官軍などの言葉から推察されるように国から認定されるものにその権威を認めまたそれを求める風潮がある。

私達が最初に法律について学ぶ時どうして法律が必要かを考えさせられる。人間一人一人がお互いの主張や利害を認め互いに合意したものが守れるならば法律などは必要のないものと教わることから始まるのである。すなわち法律は最低の基準や規範なのである。前述の約束事が整然と履行出来ないから法律として規制されるのである。

従ってこの最低さえ守れなければそこには罰則がある。宅地建物取引業法をみても第一条に「免許制度を実施しその事業に対し必要な規制を行う」とある。また同様に「購入者等の利益の保護」も同条に記載されている。大変恐縮であるが、我々業界の先人の方々が行ってきた事に対して法規制の網がかけられたのである。

何故規制されたかはここで敢えて言うまでもないであろう。また、この規正法をもってその第一条に記載されている「購入者等の利益の保護」は完全に実現されているだろうか。この答えは読者の皆さんが一番知っている事と思う。

不動産のプロフェッショナルとして

さて、この規正法には免許制度の補完として皆さんがよくご存知の宅地建物取引士資格がある。この資格は言うまでもなく国家資格である。すなわちこの規正法と国家資格をもって業務の適正化や取引の公正化は図ろうと言う意図である。もちろんその効果があったことは事実である。

しかし言い換えれば最低の適正化や公正化が実現されたことにすぎないのである。また規正するはずの法は一方で結果的に業界の保護的な機能を果たしているのも事実である。つまり業界の健全な発展を阻害することにも為りかねないのである。

昭和27年(1952年)に施行されて以来、現在に至るまで不動産業は社会的地位や信頼が高く誇れる職業として確立しているだろうか。

私達はこの業務にあたるプロフェッショナルとしてこれで良いのか。是非、自問自答してみたいものと思う。米国では不動産鑑定士でさえAppraisal Institute(不動産鑑定協会※任意団体)が認定資格を与えている。同時にその社会的地位や信頼は極めて高いものが確立されている。

法律も国家資格も必要なものであるが私達はビジネスの世界において法の遵守の限界を知る必要がある。ましてやグローバル化の中では国家間の法律や文化の違いを乗り越えてビジネスが行われるのであるからしてもちろんその限界がある。お上のお墨付きを貰っても今の時代では最低の権威に過ぎないのである。

いくら法律を定めて国家資格を創設してもそれは遵守事項の最低のものであり、いつの時代もいや流れ変わる時代の要請として常にもっと高い次元で物事に対処できる高尚な能力と理念を求められるのである。これらを備えるには自由な市場経済に身を委ねている民意の活力が必要不可欠なのである。

これを理解することによってCPM制度の第一歩が始まるのである。そして教育プログラムによって法律に規制されているものより更に積極的かつ自発的な規制の重要性を充分学ぶことになる。

すなわちCPM制度は法律に規定されている以上の自主的規制及び倫理規定を遵守し更には各個人の道徳的人格の育成に努め、プロパティーマネージャーのプロフェッショナルとしての絶対必要不可欠な知識を求めるものである。

また運用の面でもこれらに反する言動等や反すると疑わせる行為に対してもIREMの内外を問わずそのクレームがあった場合はそれらを厳正に審判する倫理聴聞審査会が設置され、称号の剥奪、CPMとしての業務活動の禁止などあらゆる裁断を決定できる事になっている。

PMと日本の賃貸管理業の違い


プロパティーマネジメントとは

プロパティーマネージメント(PM)は代理業務であり、委託者(原則)が所有する不動産からの最大収益(キャッシュフロー)を確保しその不動産価値の最大化を図ることである。この目的を達成するためにその業態の中から徹底して利益相反行為(疑わせる行為も含む)を排除している。同時に運用の透明性と説明責任を課している。またこの業務に従事するものは少なくともこれらを完全に理解しその業態に反映できる実行力(勇気)と能力、そして知識を持ち合わせている。

例えば、最大のキャッシュフローを得るために運用不動産の稼働率を上げるあらゆる手法を体系的に修得している。またそれを安定且つハイレベルに保つ能力もある。そして月額賃料については常にストリートレント(近隣の取引事例賃料)に比べ高い位置に設定出来るように市場の調査、分析はもちろん運用不動産のマネージメント能力をも備えているのである。

更には対象不動産のリスクマネージメントもその業態に含まれる。地域性や構造上(設備を含む)の問題や防犯上の問題はないか、それは将来に渡り普遍的であるか、運用不動産における環境問題は存在するのか、またその発生可能性はどうか、時間の経過によるテナントの危険負担は無いか等この業務も重要な業務の一つである。

そして不動産価値においては運用不動産を金融資産としての観点から金融工学的評価計算を行い多方面に渡る投資指数を比較検証することができる。これらを基礎に投資家(委託者)の意図を反映させながら、実際の運用計画書、マネージメントプランを作成する。これらを元に運用前、運用途中、将来に渡り不動産価値の最大化を実現していく事ができるのである。

つまりその指数から問題点を発見する能力がありそれを報告する。そしてソリューションの幾つかを提案し、運用(マネージメント)に反映し改善を加え常に価値の最大化を図っていくのである。

賃貸管理業とは

賃貸管理では前述の事が全くなされていないと言っても過言ではあるまい。少なくともマネージメントの目的が明確で体系的にその業務が遂行されているとは言えない。

土地神話の延長で右肩上がりの経済では特にこれらを求められる環境は皆無であったのである。どこかで聞いたことがあるが管理業は仲介業の延長にすぎず、全く同等なものであると唱えていらっしゃる御仁があるようだ。あながち何もしなければこれも当らずとも遠からずと言える。

その後、賃貸管理に携わる方々はその中においても少なくない努力を重ね業務の適正化に努められたと大いに評価できると思う。しかしプロパティーマネージメントが求めるそれとは大きく乖離していると言わざるを得ない。正に昨年は「プロパティーマネージメント」この単語が一斉に浸透した年である。そして直後から、その本質を知らず、また特段の業務改善を行うも無く、PM会社であるとただ単に表面的に取り繕ってその業態を説く会社があることは残念と言わざるを得ない。

前述の通り日本ではこれらが求められる環境に無かった(少なくとも居住系不動産においては)のだから、これらが出来なくても何ら不思議ではない。むしろ知らない事をオープンに自ら積極的に学び取り組む努力こそプロパティーマネージメント・CPM制度の精神に沿うものである。CPM制度の教育プログラムを通してプロパティーマネージメントの目的、手法を学べば学ぶほど賃貸管理との違いが判るのである。それは合理的で且つグローバルスタンダードであり、それに携わる私達を自信と誇りに満ちた真のプロフェッショナルと導いてくれるのである。

なぜCPM制度を導入するのか (グローバルスタンダード化の必然性)


不動産マネージメント資格の最高峰

答えは簡単である。それは80年近い歴史があり、既に体系的に完成されていること。つまり教育プログラムもその精神、理念、知識など一貫して既に構築完成されていることがあげられる。

米国にはBOMAやNAA等プロパティーマネージメントに関連する団体が幾つかある。またCPMと同じような認定資格でRPA-REAL PROPERTY ADMINISTRATOR DESIGNATION と言うのがある。これは認定団体がBOMAで商業施設不動産のマネージメントに特化した認定資格と言える。CPMは商業不動産の管理を始め居住系不動産、分譲マンションのマネージメント等をカバーする名実とも不動産マネージメント資格の最高峰と言える。

米国内においてもCPM制度はもちろんその教育プログラム自体の評価が群を抜いて高いのは事実である。別の言い方をすれば取得まで2年近い時間を要し必須と選択プログラムも多い。よって費用も高い。実際に試験が段階的にあって資格取得まで厳正なプロセスをとる。そんな評価を得ても前述の通り米国以外においてCPMが普及している国の数を見ればその効果は言うまでもない。

しかし何と言っても今の日本にとって一番必要とされているものが凝縮してそこにある事が一番である。

業務に対する知識はもちろんの事、人間として職業人として(プロとして)成功を収める事のできる姿勢を惜しみなく学ぶことができる。それは顧客に対して最も誇れる事であり、顧客が心底満足することを確約してくれるものである。これがCPM制度である。CPMの称号を取得することだけが目的ではない。この精神を学び本当の意味(顧客満足とは何か、誇れる業態とは何か、信頼とは何か、プロとしての自信は何か、自由競争とは何か)で業界の改革、発展・国際競争力の補完に個人のレベルから寄与していける基盤を作ることが目的にある。

業界のグローバルスタンダードを目指して

インターネットを始めに様々なメディアが普及し瞬時に大量の情報の伝達が可能な時代にグローバルな視点は全く不可欠である事は誰しもが認める事である。不動産が金融化していく時代の流れに沿ってこの業界も金融界と同じようにグローバルスタンダード、世界共通言語、世界共通業態を確立していかなければ共通のステージに立って国際間の競争に向かって行けるものではない。

現在、国際間において就業等に関しビザが存在しているが、情報とマネーはそのボーダーも無いしビザもない。自由に行き来しているのである。私達はもう既に否が応でも国際的な競争にさらされているのである。これらは法で規制し保護する時代ではない。こんな事をすると更に弱体し崩壊の一途をたどる事になり兼ねない。私達はこのCPM制度を通して国際的なネットワークの確立はもとよりより強固な国際競争力を身につける事も出来るのである。このネットワークはビジネスの世界だけではなく人間の絆、信頼の絆によっても成り立っており、親善交流はもとより一個人におけるグローバルな人生の幅を提供してくれる。

よってプロパティーマネージメントだけではなく、不動産流通業界にもその影響や波紋が広がる事を期待するものである。これらを背景に繰り返し言及するが、教育プログラムとして完成しているところが大きい。つまり日本導入に際して最も容易に出来る環境が整っている事、IREMもその精神を世界に普及して行こうと言うミッションプロジェクトが存在しその思考と完全にマッチしたことがその導入の実現を早めたと言って良い。